1999年1月23日
 
  地域支援セミナー 豊かな暮らしを支援するために

シンポジスト−上田氏


 今年の4月から茅ヶ崎養護が出来るわけですが、自分の中では「今時、養護学校ができるのか…」という感想があります。

 子ども達が育っていくということは、障害があるなしにかかわらず、どういう育ちをしていくのかというところを皆で考えていくことなんですけど、それは今まで、障害のある子ども達が戦後50年の中で、どういう歴史をたどってきたかというのは、今日、お越しの皆さんの多くがおわかりと思います。

21世紀に変わっていく中で、ようやく障害がある人も普通に皆で暮らしていく、地域の中で皆が誰もが一緒に暮らしていける社会を作っていきましょうということで、1980年代から、そういうふうな具体的な流れになってきています。

その中で子供の育ちというか、そこで求められてるのも、障害がある子とない子と分けて育っていくということではないと思います。教育についての世界的な流れというのは大きくいってふたつあるようです。

ひとつは「場の統合」ということです。つまり障害があるなしとか、色々な状況の違いはあるけれども、一緒に育っていく、ひとつの地域の中で、社会の中で育っていくということ、一緒になにかをやっていくという社会、それはやっぱりすごく強調していかないと、大人になってから一緒に育っていこう、あるいは暮らしていこうといったって、それは無理なんだということ。だから子供を育てる上での基本的なひとつの柱として、「場の統合」というのがあります。

それからもうひとつは、例えば地域の普通の学校に障害のあるお子さんも行きたい、通ってもいいんじゃないかと、そういう運動も、もちろんありますけれども、そうしたときに、常に言われるのが、普通の子達と同じ勉強が出来るのかということです。それは無茶苦茶な事なので、そんなことを言っている訳じゃないんです。

例えば今、教研修会という全国的な規模での学校の先生の研究会が行われてますけれども、今、テレビなんかでも「学級崩壊」が話題で取り上げられてましたけれども、子供自体が、障害のない普通の子ども達の世界が今、大きな危険の中にあるようです。

僕はこのレジメのなかで、一番最初に21世紀は子供の時代ですということを書いたけど、今、少子高齢化社会で、高齢化問題をどうしようかといっていますが、だからこそ逆に子ども達がどういうふうに育っていくのかというのが1番のポイントになる。昨日もその、普通の小学校の学級が、子ども達が教師の届かない世界にどんどん荒れて崩壊していく、それに対して学校や教員は手出し出来なくなっていくということを教員側が訴えていくわけですが、そういう社会の中で普通の子ども達も実は、ずっと追いつめられてきているわけです。

さて、もうひとつの柱というのは、個別指導計画、日本語で言ってしまうとそれっきりなんですけれども、アメリカでもカナダでもそうなんですが、IEPという言い方をします。“IndivdualizedEducation Program”といいます。つまり、基本のカリキュラムというのはあるんだけども、それに対して、この子ども達にどういうプログラムでアプローチしていくのかということをちゃんと個別にやっていこう、それは障害があるからではないですよ、普通の子ども達もそうなんです。つまりね、求められているのはその子達にあったプログラムなんです。そして同時に場の統合という、一緒に育っていくという、そのふたつのことが、少なくとも障害あるなしにかかわらず、教育に一番求められていることなんです。

 

これはもう、一昨年のことになってしまいますけれども、スウェーデンに行きました時にスウェーデンの養護学校の中で全く同じ事を言われましてね、でまた、そういう実践をやっている訳です。そういうのを目の当たりに見て、スウェーデンでも、養護学校はあるんですけれども、そこでやっていることというのは、全然、日本的なイメージとは違っているわけです。

今日は時間がないので、その中身とか、あるいはこのレジメの最後の方の話は出来ないのですが、翔の会では、来年度から地域の中で、子ども達も含めて大人の人も、先ほど親御さんからもお話がありましたけれども、実際に地域で暮らしていくためにはいろんな支えが必要なんですよね。で、この支えを得ていくために、実は今、皆さんが、ご家族が、あるいは親が、自分が必要になったら、それはやっぱり自分達で探していかなければいけないんです。

 

行政に聞いていっても、それは行政の今の枠の対応の中ではうまく繋がっていかないですよね。そういう相談していく場、あるいは支えていく場っていうのはこの地域の中ではなかったかなと思っています。

療育なんていう言葉があります。直接的には子供をどういうふうに育てていくのかということなんですけれど、地域療育なんていう言葉があるのですが、これは例えば茅ヶ崎の中で療育支援センター的なものを作ろうという意味ではないんです。療育センターというのはそういう育ちを専門的に支援する、そういうものを作ればいいという意味ではなくて、地域療育システムという言葉に言い換えると、「社会が支える子供の育ち」ということなんです。実際にはどういうことか、具体的にどういうことかというと、現状では細切れなんです。学校に入る前、就学前は、自分達で関わる、親が直接かかわる。あるいは今回このお医者さんに関わっていく、通園施設に行く、それが今度は学校に就学になっていく、それはどういうふうに繋がっていくのか、今までいた通園施設はその次に行く学校にどういうふうに実際に繋がっていくのか、学校へ行きました、小学部、特殊学級、次に中学に行くときには養護学校に行きなさいと言われた。では特殊学級でやってきたことと、養護学校の中学部でどう繋がってきたのか、これが今度、高等部へ行きます。高等部へ行ったら、今までの積み上げの事ではなくて、その先の進路の事を求められていく、進路と言われるのだけど、じゃあ進路を探して実習もしてそれで卒業しました。でその先、どういうふうに今までの教育が、その後の進路の実際にかかわってくれたのか?…実は細切れなんです。子供が育っていくためには、そんな細切れでは駄目なんです。求められていくのは、その子供をずっと、ずうっと見ていく場、ずっと関わる場、そんな場でしょう?

それから、子供を可愛がっていく場、親は家族をどうやって支えていくのかということです。子供が小さいうちはなおさらそうですよ、誰が支えていくのか、家族が支えていくしかない、ところが、では家族は誰が支えてくれるのが親だから仕方がないけれども、子供からみれば。でも親だって、親の生活もあるし、いろんな問題もあるでしょう? 親の親も今、(高齢という)問題もあるよね。そこのことを考えていかなければ、子供は育っていかない。で、その事にね、学校が支えてくれるか?通園施設が支えてくれるでしょうか?子供を支えていくというのはそこに関わっていかなければいけない。そういうことというのは含めると、生活だということ。生活を全体に支えてくれないと、つまり、子供のことだけ、面倒見てくれればいいのか、親のこと、あるいは自分達の生活のこと、あるいは小さい時から大きくなっていく、大人になってしまえばそれで終わりですか?大人になってからも、障害のある人達はそのまま、またいろんな社会の中でのトラブルや内題に直面します。

そういった中での生活をどういうふうに支えてくれるかということ。働くことも問題になってきます。性のことも問題になります。そうした生活をまとめて支えていくということが、子供を支えていくということだと思います。こうしたことができないと、実は子供を支えていくことはできない。

ぼくらは、それが具体的にどこまでできるかっていうところがあるけれども、そういう場をまず作っていこうというふうに思っています。で、来年度そういう地域での暮らしを支えていくひとつの拠点といいますかね、場所をひとつ作りたい。というふうに思っています。その中のひとつの役割として、子供の育ちに関わっていこうと思っています。具体的にはまだ細かいメニューとか、中身をこの場でお話できる時間もないし、まだ内容も十分煮詰まっていませんけれども、来年度、早ければ秋ぐらいには皆さんに、お伝えして、一緒になって支えていく環境を作りながら、僕らができることをしたい。それは僕らが、直接サービスを提供するだけじゃないんです。例えば今までの形だと、翔の会がやりますなんて言うと、翔の会はなんでもやるんだみたいな印象になる、そんなこと必要ないし、それは決して正しい方法ではないと僕らは思っています。そうじゃないんです。地域の中でいろんなボランティアグループもあるし、他の施設もあるしね、サービスもある。それが、それぞれの得意、不得意もあるし、色々な都合もあるでしょ?それのお互いの情報をもちながら、そこで「今日はちょっとごめん。うちで対応できないからそっちの方で対応してくれますか」ということがもしできたら、それってすごいかなと思います。僕らがやっぱり求めていくというか、地域で支える仕組みというのはそういうものを求めていきたい。だから“僕らがやること”というのはそういう、例えば、調整役ですよね、親が飛び回らなくてもいい、ひとつの窓口にくれば、その窓口の人が、それぞれの必要に応じて、「では今度の泊まりはあそこでやってくれるというから、あそこでお願いしてください」とか、例えば「今度の日曜日に遊びに行くんだけれども誰か一緒に着いてきてくれるひとはいないか」とか、ではあそこのボランティアグループ、じゃあ、NPOみたいな民間のグループがあるから、そこでやってくれるからその人でいいですか?という感じ。そういう調整役ができればいいなと思っています。そういう場がこれからというか今、今求められてる市にそういう役割をしていくということが、さっき言った、地域での暮らしを支えていくという事になるんじゃないかなと思っています。そんなことをやっていきたいなと思っています。

司会−和田氏

 上田さん、ありがとうございました。補足ですが、上田さんから今、NPOという言葉が出てきていましたが、NPOというのは、「特定非営利活動法人」といいまして、動向ははっきりされていませんが、法律は12月に施行されて、来年度から、認証といわれるんですけれども、行われます。

 県の説明では、9月頃に第一の認証が出るのではないかと、NPO法人というのがスタートするのではないかという説明がございました。

 いまのところ障害をもった人達やお年寄りを含めてそういう福祉活動とNPO法人とのかかわりがどうもはっきりしないんですけれども、民間の方で、“財団法人 安田生命社会事業団”という福祉の活動を支援する財団をもっていて、その安田生命社会事業団が補助する先は、今までは民家の作業所とか親の会とか、ボランティアグループというものが、補助の対象だったんですが、今後はNPO法人か社会福祉法人にならなければ補助はしないということを打ち出したそうです。だんだん、ある意味では、今までは親の会とか作業所は無認可で、法律はあってないようなものだったんですが、おそらくNPO法人というものに集約されていく可能性があるなということで、動向、方向を伺っていかなければいけないなと思います。ということで、上田さんからNPOという話がありましたが、少し補足を加えました。

 

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